保護猫を迎える⑤ 「猫ブーム」でなく社会変革を

/ 5月 29, 2017/ 保護猫・動物愛護

この記事は「保護猫を迎える」シリーズの連載5回目です。

1回目の記事はこちら→保護猫を迎える① 猫と育った経験から

2回目の記事はこちら→保護猫を迎える② 殺処分と動物愛護

3回目の記事はこちら→保護猫を迎える③ 保護猫を迎えるまで

4回目の記事はこちら→保護猫を迎える④ 猫を飼いにくくする社会

今回は4回目の記事で指摘した、猫を飼えない状況を作り出す社会をどういう方向に変えていくべきなのか考えを述べるとともに、猫ブームなる風潮についても考えます。

 

「飼いたい」を阻害しない社会へ

前回の記事で紹介したように、物理的に猫を飼える賃貸物件が非常に限られている状況では、持ち家のない人々にとって「猫を飼う」ことは、とてつもなく重い人生の選択になってしまいます。引っ越しの必要が出て来るたびに確実に猫可物件を見つける、という難題を約20年に渡る猫の生涯にわたって引き受けなければいけないわけですから。

実際私は今の家には3年程度しか住まない見込みですが、それでも猫を迎えたのは、今後どこに引っ越そうが(それがたとえ海外であろうが)、猫を最優先で物件を探す、と決意したからです。

それはもちろん、猫が私にとってただのペット以上の存在で、ここの子サイト「ひざねこ」で紹介しているように、猫が私のライフワークのパートナーであるからできることです。

でも本来、猫を迎えることはそんなに重大な決断ではないはずだと思います。

猫と暮らしたいと思い立ち、猫を受け入れられる環境を整え、猫の生涯をとおして責任をもつことだけ本人らが決意すれば、社会環境はそれを阻害するのでなく、促進する方向に作用すべきなのです。

この連載の過去の記事でも述べてきたように、動物を飼うことは非常に大きな責任を伴うものではありますが、個々人が特別の努力をせずともその責任を果たせるような環境さえあれば、猫を迎えるということはもっとずっと身近な選択になっていいのだと私は考えます。

つまり、飼えない状況を作り出さないこと。

具体的には、まずは猫を飼える物件を妥当な水準まで増やすこと。

猫の保護活動は個人ボランティアや小規模な組織が行っていることが多いですが、不動産業界への働きかけなど、抜本的に社会環境を変えるための組織化された運動が必要なのでは、と感じています。

一方で、「猫付き物件」という面白い試みも徐々に広がっているようですね(「しっぽ不動産」さんなど)。まだまだ対応地域は限られていますが、このまま順調に全都道府県に広がって定着してほしいものです。

無責任な「猫ブーム」

そんな中、日本は今「空前の猫ブーム」に湧いていると色々な記事で目にしますが、正直言って私はそういう風潮を好意的には見ていません。

「ブーム」というとさながら一過性の流行のようで、無責任に猫を飼う(というよりたぶん「買う」)人が増えそうに思えてしまうし、猫をとりまく社会課題に目も向けずに、何かファッションのように「猫」をもてはやし、「猫」がもたらす経済効果を強調する浅はかさには嫌悪感すら感じます。

彼らが「猫」と呼ぶものは、もはや命を持った尊い存在ではないように聞こえます。

もちろん、猫に注目が集まることは保護猫や動物愛護に注目を向けるきっかけにもなるし、そういう切り口での特集も目にします。より多くの人が動物愛護に目を向けるようになるのであれば、それは喜ばしいことです。

他方で、芸能人が「撮影の合間に訪れたペットショップで一目惚れして猫を買った」といったような類の話が、メディアでなにか微笑ましい話として流布されているのを見ると、強い違和感を感じます。

これは別にペットショップでペットを買う個人を批判しているのではなくて、ペットショップでその場の勢いで生き物を買うということが一般的に許容されている社会に疑問を抱かざるを得ない、ということを言いたいのです。

(余談ですが、わたしはそもそも「ペット」という言葉が嫌で自分では使いません。たぶん「ペット」はある種の流通商品でしかなく、その言葉に命の重みを感じられないからだと思います。)

 

今回でいちおう「保護猫を迎える」シリーズは終わりです。もちろん今後も動物愛護や保護猫については適宜発信していきますけれども!

5回の連載をとおして、結局、私の伝えたいことはとてもシンプルです。

猫を飼うことはもっと身近な選択肢であっていい。しかしながら、命を預かるということはそんなに軽々しいことではない。

矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、結局私はこのように思うのです。

責任を持てる人々が猫を飼いやすく、かつ無責任な人々に生き物が買われることを防ぐことのできる社会。

私はそういう社会の一員になりたいと思います。

 

(この記事で使用した写真は筆者が2017年2月にルワンダで撮影したものです。)

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