保護猫を迎える② 殺処分と動物愛護
この記事は「保護猫を迎える」シリーズの連載2回目です。
1回目の記事はこちら(→保護猫を迎える① 猫と育った経験から)からご覧ください。
1回目の記事でお話した通り、私は生まれた時から猫と育った背景から、動物を飼うことに伴う責任の重さや、死と向き合わなければいけない重圧を自然に学んでいました。
それと同時に、ペットとして迎える動物はペットショップで買うものではなく、人から譲ってもらうもの、という認識が、幼少期の体験を通してできあがっていました。
一方、日本の一部地域では野良猫が増えて問題になっていることや、それに対応する策として野良猫に避妊去勢手術を施してもとの場所に戻すTNR活動が行われていることは知っていました。
でも、正直なところ、猫や犬の殺処分については何も知りませんでした。
猫の殺処分について
日本では、所有者の不明な犬・猫、ないしは飼い主に飼育を放棄された犬・猫の殺処分が動物愛護センターと呼ばれる行政機関によって行われています。殺処分を管轄しているのは環境省です。ここでは環境省のページ(→犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況)を参照し、その現状を把握してみます。
殺処分される犬・猫の数は年々着々と減少しています。平成元年に約101万5千頭だったのが平成27年には約8万3千頭と10分の1未満に減っていますから、その減少率は劇的といってよいと思います。
とはいえ、未だに年間8万頭の犬猫が殺処分されているのです。この殺処分数8万3千の内訳は、犬15,811頭、猫67,091頭となっており、平成27年には犬の4倍以上の数の猫が殺処分されたことになります。
上記環境省のページの円グラフを見てみましょう。動物愛護センターに収容される犬と猫を比較すると、犬と比べて猫は、幼齢個体(子犬・子猫)の比率が圧倒的に大きくなっています。犬の幼齢個体比率が全体で18%なのに対し、猫はこれが71%にものぼります。
猫は繁殖力が強いため、野良猫は放っておくとどんどん増えてしまいますし、飼い猫が出産した時に子猫の世話がしきれず愛護センターに持ち込む人や、捨ててしまう人もいます。こうした背景で、愛護センターに収容されて殺処分されてしまう子猫の数が突出して多くなるのです。
私は高校生のころ、子猫が5匹ほど靴箱ほどの大きさの箱に入れられて捨てられているのを見つけたことがありますし、今から5年ほど前には、生後2,3ヶ月程度の子猫を実家近くで保護し、そのまま実家で飼い始めました。今自宅で一飼っているうたまるも、小さい頃にきょうだいと思われる三毛猫と一緒に保護されたのですが、おそらく捨て猫だったのではないかと思います。
さまざまな動物愛護活動
これほど多くの子猫(平成27年は約4万4千匹)が幼いうちに行政の手によって殺されてしまうというのは受け入れがたい状況です。
動物愛護センターは、所有者不明ないし飼育放棄された犬猫を一定期間収容し、引き取り手が現れない場合に殺処分する施設(以前「保健所」と呼ばれていた施設)ですので、この機関が行っている活動は「動物愛護」とは対極にあります。
本来の動物愛護活動は、民間団体や個人レベルで広く行われています。
先にも触れたTNR活動は、猫が繁殖できないように避妊・去勢の手術を施すことで、野良猫を一世代で終わりにし、こうした不幸なかたちで奪われる命を最小限にするもので、「地域猫」などと呼んで地域全体で野良猫の世話をする活動などに取り入れられています。避妊・去勢手術を終えた地域猫は、目印に片耳の先をカットします。カットされた耳の形が桜の花びらのように見えることから、こうした猫は「さくら猫」と呼ばれます。
私が以前勤めていた団体は、多くの事業の中のひとつの事業として犬の保護・譲渡活動を行っていました。その活動をそばで見る中で、日本には保護・譲渡活動や啓発活動などの動物愛護活動を行う非営利団体が数多く存在することを知りました。
首都圏や近畿圏では、犬や猫の保護・譲渡活動を行う団体が毎週末のように譲渡会を開催しています。
猫カフェが普及しはじめたのは10年ほど前かと思いますが、今では、従来のように血統書付きの猫でなく保護猫だけを集めた保護猫カフェも増えてきました。
また、最近は芸能人が保護猫や保護犬をペットに迎える例が増えていたり、動物愛護に注目する議員が積極的に情報発信を行ったりしているおかげで、一般的に動物愛護への関心が高まっているように思います。
このように、動物愛護活動が広く認知され拡大していることが、犬猫の殺処分数の減少につながっているものと思われます。
しかし、それでもまだ年間8万の犬猫の命が奪われています。
一方で、ペットショップで販売される犬猫の繁殖のあり方にも、深刻な道義上の問題が指摘されています。(→たとえばこのページをご参照ください:子猫のへや「ペットショップで猫を買う前に」)
人間の勝手な都合で動物の命を奪ったり、金銭のために非道なやり方で繁殖させたり、私たちは随分と命を軽視してきました。
「ネコノミクス」などと安易に猫のもたらす経済効果をもてはやす前に、私たちには他にやるべきことがあるのではないでしょうか。
次回は、猫の保護活動と保護猫の迎え方についてお伝えしようと思います。
(この記事で使用した写真は、小さい頃に路上で保護し現在は私の実家で暮らしている猫のものです。)