春が象徴するもの -終止符、飛躍、そして無常-
随分長く更新できずにいました。
1月に出張があって体力の限界まで働き、2月は反動で抜け殻のように過ごし、3月に入ると急に仕事が忙しくなり・・。
そうこうしている間に誕生日を迎え、また一つ無事に年を重ねました。
自分の生まれた時期だからというのもありますが、3月下旬から4月にかけての季節は一番好きです。
終わるべきものが終わり、新しい手つかずの何かが始まる季節です。
今日は桜の写真をたくさん撮ってきたので、写真を披露しがてら、春の象徴するものについて書いてみようと思います。
仕事の一環で、月に一度インターネットラジオで話すことがあるのですが、4月分の収録で「4月、春というのは日本人のあなたにとってどういう意味合いがありますか」という質問をされました。
ちなみに、このラジオ番組は私以外の出演者は日本在住ないし日本に留学中の外国人です。「日本人のあなたにとって」という質問が出るのは、こういう背景によるものです。
台本もなく唐突に聞かれたので、その時はなんだか無難なコメントを返す形になってしまいましたが、今日素晴らしい天気の中で写真を撮って歩いている中で、それについて改めて考えたのです。
まず、春は何かが終わって別の何かが始まる季節です。
学校だったり仕事だったりもそうですが、特に3月下旬生まれの私にとっては、1年の区切りが訪れる時期でもあります。
過去1年を振り返り、できなかったことや、逆にこれからの1年でしたいことを思い巡らせる時期です。
それはつまり、何かに終止符が打たれ、それに代わって、新たな飛躍を描く季節ということになります。
でも、今日まだ咲きはじめの桜を見て、同時に桜を愛でるたくさんの人の姿を見て、それだけではないなと思いました。
日本の春の代名詞は間違いなく桜です。お花見したさにこの時期に日本にやってくる外国人旅行者も多いでしょう。
桜とは、ほんの1,2週間で散っていく美しくも儚い花です。
それは私にとっては、「無常」という、たぶんとても日本的な哲学を体現しています。
「諸行無常」という言葉を知ったのは中学生の時。
たぶん多くの方が国語の授業で暗唱させられた、平家物語の冒頭の文章ですね。
平家物語は平家の盛衰を描いた物語なので、「無常」という観念が前面に出てくるのはとても自然なのでしょうけれど、私はこれをもっと根源的な哲学のように思います。
現在その人が手にしている色々な良いもの。例えば安定、愛情、友人、富、名声、栄華。
春になり桜を見ていると、そういった良いものは桜と同じように儚く消えてしまうのかもしれない、と考えさせられるのです。
じっさい、桜の季節は焦燥感にかられます。桜の見ごろを逃してはいけないと、天気の良い日にはカメラを首から下げて出かけたくなるのです。
美しいものに夢中になってそれを追いかけ、儚く散る前になんとか縋ろうとするのです。
それはそのまま、人間の生き方のようでもあります。
私はつい先日誕生日を迎えましたが、過去1年間を振り返ると、お金に直結する仕事ばかりを追いかけてしまったな、という思いが強く、その点は強く反省しています。
1年と数か月前、組織に属するのをやめてフリーランスとして生活していくことを決めた時、本当は、今日のように美しいものを見るのにゆったりと時間を使ったり、趣味の写真に時間をかけたり、自分の心のうちを文章にしたり、自分と家族の生活を豊かにするために時間を使ったり、そういうことをしたいと考えていたのです。
それなのに、より多くの生活の糧を確保することに焦り、目の前に現れる見栄えの良いものに惑わされ、駆り立てられてきました。
その結果、実際に仕事は増え、収入源もある程度多角化できましたが、それが自分や家族の本来の意味での豊かさに結び付いているかはわかりません。
主に仕事が原因でストレスを抱え込むことも多い1年でした。
そのせいで、毎日そばにいる夫には何度も心配をかけました。
去年はそんな1年でしたが、これからの新しい1年は、今日桜を見ながら思い起こした「無常」の精神を心の根っこに刻んで生きていければいいと思います。
見栄えのいいもの(つまり私にとっては、お金に直結するいい仕事)はずっと私のもとには留まらないし、必ずしも私の生活を豊かにはしない。
だから、私は目先のお金に飛びつくのではなく、自分が今後ずっと続けていきたいことや将来仕事にしたいこと、そして家族の暮らしを良くすることにもっと時間を使う。
そして現状に満足せず、日々新たなことを学び、或いは今持っている知識を磨いて、たえず自分を向上する。
そういう意識と不断の努力なしでは、今ある安定も家庭の幸福もきっと守れないでしょう。
このように自分を戒め、これからの新しい1年を過ごしていきたいと思います。
新しい年の節目の抱負として、今日の写真と共に書き残しておきます。
(この記事で使用した写真は全て、2018年3月25日に筆者が撮影したものです。)