保護猫を迎える④ 猫を飼いにくくする社会
この記事は「保護猫を迎える」シリーズの連載4回目です。
1回目の記事はこちら→保護猫を迎える① 猫と育った経験から
2回目の記事はこちら→保護猫を迎える② 殺処分と動物愛護
3回目の記事はこちら→保護猫を迎える③ 保護猫を迎えるまで
今回は、保護猫うたまるを迎えるにあたってはじめて気付いた社会の問題について触れたいと思います。
「ペット可」物件はほぼ「小型犬のみ可」物件
私の場合は、海外駐在の仕事を終えて帰国し、日本で新しい家を見つけて引っ越したタイミングで家に猫を迎えることを決めていました。
ですので、当然ですが家探しの際は「ペット可」を条件にして物件を絞り込みました。
インターネットの不動産紹介サイトで探すと、まず「ペット可」の条件を追加した時点で物件数ががくんと減ります。
そこで検索にかかった「ペット可」物件一軒一軒の詳細を見てみると、「小型犬のみ可」と書いてあることが非常に多かったです。
どおりで小型犬が流行るわけだ、と思ってしまいました。
実際、「小型犬のみ」と明記されていない物件でめぼしいものを2,3選んで不動産屋の店舗に相談に行ったときも、「猫を飼える物件はほとんどないですよ!」と断言されました。
まだ実現していませんが、実は私は保護猫を二匹迎えたいと最初から考えていたので、「猫を二匹飼いたいんです」と相談すると、「それは無いですよ、相当の敷金礼金を積まないと」と冷たい反応でした。
猫は壁やドアをひっかくし、匂いもつくし・・という理由で大家が嫌がるのが、猫可物件の異常なほどの少なさの背景にあるそうです。
とても極端に言ってしまえば、「猫を飼いたければ家を買え」と言っているのに近い状況です。
「飼えない」を作り出す社会
猫を飼える賃貸物件が極端に少ない。
この状況は明らかに猫の殺処分数の多さに貢献しています。
たとえば、転勤の多い仕事をしている夫婦が猫を飼っているとします。
何年かで転勤することが目に見えているので、まだ家を買う気にはなれない。
そして転勤が決まり、転勤先で賃貸物件を探します。
ところが、条件に合う物件で「猫可」の物件がどうしても見つからない。
夫婦は泣く泣く猫を手放さざるを得ない・・。
この夫婦が責任感ある人々なら、知人のつてを頼ったり里親募集サイトに掲載したりして、なんとか新しい飼い主を探すでしょう。
でも、残念ながら社会にはそこまでの責任感を持っていない人もいます。
人によっては、飼えなくなったという単純な理由で猫を愛護センターに持ち込んだり、或いは置き去りにしたりするかもしれません。
愛護センターに持ち込まれれば、運よく保護活動家に救われなければ殺処分されてしまいます。
置き去りにされれば、家猫として全うできたはずの生涯を全うできずどこかで命を落とすでしょうし、もし避妊去勢がされていなければ繁殖してさらに不幸な命を増やすことにもなりかねません。
猫を飼える物件が限られていることが、猫を飼いたくても「飼えない」という状況を作り出し、結果的に不幸な猫を増やすことに繋がるのです。
このように直接的に猫の運命を左右しない場合でも、猫を飼いたいと思い立った人が、将来引っ越しがあるかもしれないとか、奥さんが妊娠したらトキソプラズマの心配が、とか色々考えを巡らせた結果、そもそも猫を飼うということを諦めてしまう場合もあるでしょう。
いずれにしても、猫を飼える物件が極端に少ないという社会の状況が、猫を飼うことを難しくしてしまっているのです。
当たり前のように猫と育った私にとっては、とても残念な現状です。
次の記事で、この課題についてもう少し考えていきたいと思います。
(この記事で使用した写真は、筆者が2017年1月に英国で撮影したものです。)