若さを呪いにする社会 -日本社会における権威のあり方について-

/ 5月 14, 2017/ 世界/日本社会情勢, 働き方, 日本社会情勢

出張でルワンダの首都キガリにいます。

自宅にはテレビがないのでテレビを見る習慣はないのですが、出張中はホテルの部屋にテレビがあるので、この週末は久しぶりにテレビを見て過ごしています。

今日は朝からフランスでマクロン大統領の就任式が行われていたので、BBCの中継を見ていました。

史上最年少でフランス大統領に就任したマクロン氏は39歳。BBCでは何度も彼の年齢を引き合いに出し、彼の若さを強調していました。

一国(そして世界有数の大国)の行方を背負うには、39歳は若すぎるのでしょうか。或いは、若い彼にしかできない何かを期待しているのでしょうか。

マクロン氏の年齢を強調する背景に何があるのか、フランスという社会を知らない私には正確には読み取れません。

 

私が社会に出てからこの春で丸8年が経ちましたが、私はその半分近くを海外で過ごしました。

日本で働いていた期間も、国際協力の仕事をしていたので、日本の組織でありながら英語(ないし別の外国語)はできて当たり前の世界でした。それは、多分日本社会の中では決して一般的ではない類のコミュニティなのでしょう。

1年半におよぶケニア駐在を終え、昨年末に日本に帰ってから半年になりますが、今の私の目に改めて映る日本の姿は、おそらく8年前の私に見えていたのとは随分違うものになっています。

現在の私は、日本社会の印象を概ね次のような言葉で表現したいと思います。

権威主義的男性社会。

日本が男性社会であることに異を唱える人はいないと思いますが(実感のみならず国際比較において明らかなので)、それ以上に、この権威主義的な社会において若さは呪いでしかないと強く感じます。

 

これは私個人の実感でしかありませんが、どうも日本社会では、多くの場合権威は年長者が握っているもので、その権威が引き継がれる際には、その権威のあり方(権威は年長者、そしてしばしば男性が握るものであるという規範)も同時に引き継がれます。

年少者がメディアでもてはやされることも最近は多いようですが、結局のところ、年長者は若くして活躍している人々を家父長的な(つまり完全に上から下に向かう)視点で見ているように思えます。

若者の意見が侮られ軽視され封殺される一方、それよりも内容に乏しい年長者の意見が重視される、そんなやりとりを過去数年間でいくらも見てきました。

そこに能力主義は微塵も存在せず、ただ年齢に比例して会得される空虚な「権威」だけがものをいう社会。

それはたぶん日本だけに限った風潮ではないのでしょう。海外にいた頃も、特にイスラム系の男性にはそういった思考が強いように感じました。

 

いずれにしても、若者にとって魅力的でない社会からは若者が離れていきます。

近年はアフリカで起業する若者も増えています。また、日本でも都市から離れて田舎を目指す若者も増えています。

日本の都市、特に首都圏は、おそらく若者を惹きつける魅力を失いつつあるのでしょう。首都圏には雇用が集中していますから、若者が都会から消えることはありませんが、そこに残るのは働き方の一形態として「雇用」を選ぶ類の若者であり、別の選択肢を取る者、そして既存の権威のあり方に辟易した者は、どんどん離れていくでしょう。

そんな社会の未来は果たして明るいでしょうか。

 

私はここキガリで、先日まである国際会議に参加していました。

「イノベーション(革新)」をキーワードにする国際会議のあるパネルディスカッションで、政府の閣僚が「我々は若者の持つ力を信頼しなければならない」といったような発言をしました。

別のパネルディスカッションでは、頭脳流出の話題が出ました。海外に出ていく優秀な若者をどうやって母国に連れ戻すのか。その大きな課題に対しては、ある閣僚が自身の実体験を引用して冗談を交えた応答をしました。

日本よりはずいぶん先進的なのかもしれませんが、私はまだまだ認識が追いついていないと思います。

権威ある地位にある年長者がしなければならないことは、若者を信頼することに留まらず、若者に払われるべき敬意を払うことだと私は思います。

家父長的な見方は敬意と対極にあります。

 

別のパネルディスカッションで、誰かが「マインドセットを変えなければならない」という発言をしました。それはここで私が書いたこととは全く関係のない、アフリカに住む若者たち自身がアフリカ域内よりも海外を志向する傾向が強いことへの警鐘でしたが、権威のあり方についても同じことが言えると思います。

今朝のBBCで、フランスで39歳の大統領が誕生したのは「エリート教育の成功例であり能力主義の象徴」といったようなコメントがありました。

フランスが今後どうなるのか興味深く見守りつつ、日本にも良い影響がもたらされることを期待したいと思います。

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