アフリカ回想録① 私の愛しい国、エチオピア-2010年
今回から「アフリカ回想録」と題して、私が今まで訪れたアフリカの国々を写真をちりばめながらご紹介したいと思います。
第1回目の今回は、迷わずエチオピアを。
私が初めて訪れたアフリカの国であり、どこよりも多く訪れた国であり、私の仕事の原点です。
そして何より、私にとって思い入れの強い国です。アフリカでは9か国、世界全体では30弱くらいの国を訪れましたが、エチオピア以上に思い入れのある国はありません。
私が唯一「愛しい国」と呼びたいと思える国。それがエチオピアです。
エチオピアは、東アフリカの「アフリカの角」と呼ばれる地域にあります。
内陸国で港がなく、海運はジブチの港を経由して行われます。
開発独裁に近い政治体制で顕著な経済発展を遂げており、近年は日本のメディアに紹介されることも増えましたが、私が初めてこの国を訪れた2010年時点では、この国は世界最貧国の一つでした。
コーヒー発祥の地であり、世界でもここでしか見られない穀物テフを原料にする主食インジェラなど、独自の文化を発達させてきた国です。
第二次世界大戦中のイタリアによる占領期間を除いて欧米列強に植民地化されたことがないという史実は、誇り高いエチオピア国民の精神の根源にしっかりと根付き、継承されているように思います。
首都アディスアベバは標高2200~2300メートルの高地に位置し、世界一標高の高い首都だと言われています(現地で見た地図に書いてありました)。
高度のおかげで暑すぎず寒すぎず、乾燥していて気候は快適です。
しかし、一歩アディスアベバを出て地方を巡れば、地形は多様です。
北部~北西部に山々の連なる冷涼な地域があるかと思えば、北東部には海抜よりも高度の低い観光名所ダナキル・ディプレッションが存在します。
民族も多様で、それぞれが言葉を持っています。
地方へ赴いた際に就学前の小さな子どもに出会って何か話しかけられた時も、首都地域出身で国語アムハラ語しか話さない通訳には言葉が通じず、何を話そうとしているのかわかりませんでした。
2010年に当時勤めていた商社の仕事で初めてこの国を訪れてから、私は合計5回この国を訪れました。
2度目は修士課程の論文の実地調査のため。3度目は現地の友人を訪ね、4度目に初めて名所をまわる観光客として訪れました。5度目はちょうど1年ほど前、所属していたNGOのニーズ調査で再訪しました。
まともに観光したのは一度だけなので、旅行者としての知識はほとんどないのですが、アフリカになじみの薄い日本人の旅行先には良い場所だと思っています。
まず第一に、首都も含めて抜群に治安がいい。
第二に、文化的に日本と親和性が高い。
そして世界遺産も豊富で見どころが多く、独特の食文化や伝統舞踊は首都にいても十分に楽しめます。
私はあまり不便しないのでよくわかりませんが、統制の厳しい国なのでSNSの類がつながらないらしく、一部の日本人にすこぶる不評なのも事実ですが、僻地に観光に行くのであればあまり関係ないと思うので、観光目的の方には自信を持ってお勧めします。
見どころは、最近日本で人気らしいダナキル・ディプレッションの他、ラリベラの岩窟教会群、ゴンダール、シミエン国立公園等たくさんあります。
個人的にはシミエンはいつか必ず行ってみたいと思っています。
先に「アフリカになじみの薄い日本人の旅行先には良い場所」と書いたのには理由があります。
エチオピアはアフリカの中では文化的にも民族的にも異質な国なので、「アフリカっぽさ」みたいなものを体感するには向いていません。
実際、私が初めてこの国を訪れた時、同行したパキスタン人の技師の方は、自国に似ていると言っていました。
アフリカに行ったことのない人が抱くアフリカのイメージよりも、むしろインドやパキスタンあたりのアジアに近い雰囲気を持った国なのです。
そんなわけで、日本人にとっては文化的に親しみやすく入りやすい国であり、また、「アフリカ」に対するステレオタイプ的イメージから脱却するにも、エチオピアはいい国なのです。
ネットで情報を集めると、「エチオピアだけは二度と行きたくない」というようなことを書いているブロガーもいますが、さあどうでしょうか。
物乞いなど途上国一般で遭遇する難しさは当然ありますが、それを考慮しても十分に魅力的な国だと私は思います。
第1回目の今回はさわりだけの軽い内容になってしまいましたが、これから数回かけて、今までに撮影した写真を中心にエチオピアの紹介をしていきます。
(今回使用した写真はどれも2010年11月に私自身が撮影したものです。)